「スター・ウォーズ/暗黒卿ダース・ヴェイダー」 ジェームズ・ルシーノ
投稿日 | : 2006/04/30 21:21 |
投稿者 | : Excalibur |
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『エピソード3/シスの復讐』直後を舞台にした物語が、上下巻の小説として発売になった。小説だからこそ描けるアナキン=ヴェイダーの内面描写が興味深い一篇に仕上がっている。
物語は『エピソード3』終盤の、オーダー66が発動される直前から始まる。
全てのクローン・トルーパーがこの命令に従ったわけではなく、一部では命令を拒否した者もいたことが明かされる。これはジェダイと長い間共に戦ううちに芽生えた、”戦友”という感覚によるものだと説明されるのだが、それによって虐殺を逃れたジェダイたちがおり、ここにダース・ヴェイダーの出番となる。
しかし、重たくて歩きにくい足、大きすぎてライトセーバーを握りにくい手、頭を90度に曲げないと足元さえ見えないマスク、ひどいかゆみを起す合成皮膚、それに呼吸器の音がうるさくてろくに眠れない等々、新しいボディーの出来の悪さに苛立ちを隠せず、ボヤキまくりのヴェーダー卿が可笑しい。既にヴェイダーは強大な悪の権化ではなく、悲劇的な憐れな人物だと認識されているということだろうか。
パルパティーンことダース・シディアスをはじめとして、ベイル・オーガナ、モン・モスマ、ウィルハフ・ターキン、チューバッカ、C−3POとR2−D2、そしてオビ=ワン・ケノービといった具合に御馴染みの顔ぶれは出てくるものの、いずれも”重要な脇役”といった扱いで、物語上では新たな主人公とその仲間たちが活躍するのだが、紛れもなく『スター・ウォーズ』世界の物語として完成されている。『エピソード4/新たなる希望』へのブリッジとして、ファンならば押さえておかねばならない一篇だろう。
次は是非にも、タトゥイーンに隠遁したケノービにスポットを当てた物語を望みたい。
ちなみにこの物語のラストでオビ=ワンは、自分が見殺しにしたと思っていたヴェイダー=アナキンが生きていたことを知り、かつての師であるクワイ=ガンと語り合うというシーンがあることを付け加えておく。