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「懐かしい人びと」 内海隆一郎
投稿日 : 2008/10/01 18:15
投稿者 久保田r
参照先
 月刊「PHP」に連載されていた短編による5冊目の作品集。主に40代以上の年齢の男女が主人公となっていて、子育てを終えて第2の人生を歩んでいる様々な立場の人物の「思い」が、深く静かに染み入るように綴られている。

 第2の人生を歩んでいる年齢ともなると、長い人生の中で色々な経験をしたうえで今に至っているわけで、家族に囲まれて幸せに暮らしている登場人物もいれば、離婚して静かに独身生活を送っている者もいれば、伴侶と死別した者や、田舎を飛び出して都会に住んでいる者や、病気をしている者や、思い出に囚われている者など…傍目にはそれと分からなくても心に何かしら気にかかることを抱えて生きている者がほとんどで、この短編集では、一遍一遍の中でそれぞれの人物の思いを丁寧に描き、人びとの交流から得られる心の機微をじんわりと柔らかい目線で描き心に温かく印象づける作品集となっている。

 本書で描かれている登場人物の感情は、20代の若者が経験するようなはっきりとした喜怒哀楽ではないけれど、過去の苦い思い出が年齢を重ねて懐かしいものになっていたり、他人には分からない小さな喜びが糧となっていたり、一言では言い表せない登場人物たちの複雑な「思い」が、この短編集の中で表現されている。そのため、短編といえども深い味わいに浸ることのできる作品集。一日に一遍ずつ噛み締めるように読むのをおすすめ。

<収録作品>
きらめく波/目覚めまで/弁当箱/たんこぶ/みのむし/あのころ/かたぐるま/迷い猫/花束/山へ/冬の陽射し/月の匂い/春の夜/桜の花/最初の客/白い木/夜のピアノ/小さな工房/思い出/お隣さん/インコの羽根/父の仕事場/ドライブ/懐かしい人びと(全24篇)

2003年8月18日 PHP文庫

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