トップページ > 記事閲覧 
「花芯」 瀬戸内寂聴
投稿日 : 2007/05/07 16:42
投稿者 久保田r
参照先
2005年2月15日 (株)講談社 講談社文庫

<収録作品>
「いろ」
「ざくろ」
「女子大生・曲愛玲」
「聖衣」
「花芯」
「解説」川上弘美

記事編集 編集
Re: 「花芯」 瀬戸内寂聴
投稿日 : 2007/05/07 16:43
投稿者 久保田r
参照先
 初めて読んだ瀬戸内寂聴さんの小説。色々と評判は見聞きしていたので、どのようなものなのかと怖いもの見たさで読んでみたのだが、読み終えてから”なるほど…”と妙に得心した。書いてあることは、「女」。女性ではなく、「女」。匂い立つような、「女」。登場する「女」の外見について詳しく描写されていないところがまた色っぽさを想像させる。

 5編の作品が収録されているが、表題作の「花芯」に全てが集約されている。「花芯」を読むと、他の4編の印象が霞んでしまうほど「花芯」に込められている「女」の奥行きは深い。一人の女性の自伝的作品となっていて、主人公、園子の恋の遍歴が綴られてあるのだが、夫の子を産んだ後、園子の体は「女」として目覚め、夫の上司に恋をし、その恋が終わると性愛の遍歴へと変化してゆく。この作品で「子宮作家」というレッテルが貼られたそうだが、なるほど…と頷かざるを得ないほど、この作品の「女」の奥は深い。女性の「女」の部分を始めから終わりまで丁寧に紡ぐように暴きたて、一人の女性の人生をリアルに作り出している。この作品の主人公の園子のような感じ方は、多かれ少なかれ女性ならばある筈だ、と私は思う。

 その他の作品もどれも艶に満ちた内容になっている。中には、精神的に悪寒を感じる作品もあるが、不思議と作品の終わりが気になって途中で読むのを止める気にはならない。それは、残酷に思えるような部分も「女」として持ち合わせている部分であるような気がして、若干引きつつも自分では気づかぬ内面が書かれてあるような気がして読んでしまう。作者の書く作品は、「女」であることを隠さずに女性の内面について五感で感じ取ることのできる内容となっている。
記事編集 編集
件名 スレッドをトップへソート
名前
メールアドレス
URL
画像添付


暗証キー
画像認証 (右画像の数字を入力) 投稿キー
コメント





- WEB PATIO -