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「七つの恋の物語」 渡辺淳一
投稿日 : 2007/06/06 16:18
投稿者 久保田r
参照先
昭和59年8月25日 (株)新潮社 新潮文庫

<収録作品>
「恋骨」
「恋寝」
「恋子」
「恋闇」
「恋捨」
「恋離」
「恋川」

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Re: 「七つの恋の物語」 渡辺淳一
投稿日 : 2007/06/06 16:20
投稿者 久保田r
参照先
 七つの恋物語が収められた短編集。七編すべてのタイトルに「恋」という文字が付き、それぞれタイトルに見合ったストーリーが綴られている。七つの恋物語が明かされる場所は、赤坂みすじ通りにある「水曜日の朝」という風変わりな名前のスナック。人生経験豊富なママの導きによって客たちは今夜も恋を語り始める。

 独自の視点で男女の絡みを書く渡辺淳一さんの作品に触れてみたくて読んだ。短編よりも長編の方が渡辺淳一さんの本領に触れられるのかも知れないが、取り敢えず渡辺さんの描く恋愛を読んでみたかったので、この短編集にした。そして、読後の感触は、すっきりともせず人によっては怖ささえも感じられる男の視線と女の視線が同時に描かれていると感じた。

 始めの六編「恋骨」〜「恋離」までは、スナックに訪れる客やママの姪の恋物語。最後の「恋川」が、ママの恋の遍歴となっている。交通事故に遭った恋人に骨盤の骨を提供する話や、癌で子宮の摘出手術をした夫婦の話、夫の誕生日に合わせて妻が子供を産む話、プレイボーイに心身ともに尽くす話、ママの姪がスキーで捻挫した足の治療で訪れた病院の医師に一目惚れする話、親の勧める結婚を断り切れずに恋人とは別の女性と結婚する話、そしてママの若かりし頃の命をも投げ出さんばかりの激しい恋。これら七編が描かれている。

 恋物語ではあるが、どれもハッピーエンドではない。唯一「恋子」が、夫の誕生日に合わせて無事子供を産むのでハッピーな結末とはなっているが、何としても夫の誕生日に産むという妻(女性)の一念には、一種の恐怖感さえ覚える。どのストーリーも愛する人のために尽くすのだが、優しさが重荷であったり、優柔不断さが許せなかったり、病気がふたりの間を変えたりと上手くは行かない大人の恋愛が描かれている。ゆえに大人の恋愛は、嵌ると抜け出せない魔力を持っているのではないだろうか。だからこそ、一度はこういう恋をしてみたいと焦がれるのかも知れない。
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