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「遠野物語」 柳田国男
投稿日 : 2007/12/10 15:58
投稿者 久保田r
参照先
 民俗学者の作者が岩手県遠野近辺に伝わる民話を編纂したもの。「物語」とあるが、一つの長いストーリーではなく、河童にまつわる話やら、神隠しやら、座敷童子、死に関すること、死者、まぼろし等々あらゆる逸話がほんの数行ずつたくさん収められている。本編の「遠野物語」は119話。補完的な意味合いを持つ「遠野物語拾遺」には299話収録されている。

 明治45年発表の作品なので、文体が堅く読み難いのではあるけれど、現代ほど交通も情報伝達も発達していない古い日本の地方の民話を知るという点では、現代に於いても有力な資料価値のある作品だと思う。遠野という地域は、周囲を山に囲まれた陸の孤島のような場所なので、遠野で生まれ、遠野以外の地へ出ることもなく一生を終える人も少なくなかったと思う。そんな遠野で暮らして来た人々が、自然との共存の中で必然的に生まれた独自の”文学”が、この民話の数々だと思う。

 この本を読んで思ったのは、現代で言うところの「都市伝説」のようなものではないかと思った。そういった視点から見ると、現在流行の「都市伝説」も「遠野物語」の延長上のような気もして来る。ということは、昔から人間はずっと人知の及ばぬ不思議で奇妙な話に惹かれてやまない習性を持っているということが言えるような気がする。

 本を読んでいると、遠野は別次元にある地域なのではないかと思えて来るほど、不思議な話が多い。死者の話では、身震いしてしまうほどの逸話もある。そういった地域独特の空気が、人心を引きつけるもう一つの魅力になっているとこの本を読んで思った。

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