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「湖畔亭」 内海隆一郎
投稿日 : 2009/12/10 17:10
投稿者 久保田r
参照先
1997年1月25日 (株)集英社 集英社文庫

<収録作品>
「湖畔亭」「蛍の宿」「海鳴り旅館」「晩秋の宿」

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Re: 「湖畔亭」 内海隆一郎
投稿日 : 2009/12/10 17:13
投稿者 久保田r
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 4つの温泉地を転々としながら暮らす初老の男性の活躍を描いた連続小説。主人公の小笠さんは、客として泊まっていた温泉旅館「湖畔亭」で湯の温度が適切でないことに気付き、自ら湯番を買って出た。湯の管理の他にもちょっとした自動車の修理や、笛吹き、三味線、絵の目利き、料理、果ては揉め事の調停や人助けまでもこなす”スーパーおじいちゃん”。だが、そんな人当たりのいい小笠さんの私生活は決して順風満帆ではなかった。

 登場する温泉旅館は、「湖畔亭」「元湯館」「魚鱗館」「蓬莱館」の4つ。どれもその土地で名のある旅館で、小笠さんは、行く先々で起こる様々な問題を、柔らかな物腰と培った経験で鮮やかに解決する。小笠さんは、若い頃に勤めた旅館でこの道の仕事を覚えたのだが、生来の浮気性が元で世話になった旅館を辞め、次から次と様々な仕事を覚えては辞めていくを繰り返し、小笠さんを慕い駆け落ち同然で一緒になった奥さんにも先立たれ、息子夫婦とも相性が合わず、何やらワケありという素性のまま一定の住所を持たずに気楽な人生を送っているという初老の男性。

 そんな小笠さんが若い頃に世話になった旅館というのが、最終話に登場する「蓬莱館」。この旅館で小笠さんの過去が明らかになり、また本職である料理人としての本領を発揮し、旅館と若女将夫婦を助け、遂には亡くなった奥さんの母の大女将とまで和解し、浮き草のようであった小笠さんにようやく落ち着き場所が見つかる。

 このお話の内容には、何ものにも束縛されない自由な人生もいいが、人は遠回りをしながらも落ち着き場所を求めて旅をし、一度は出て行った場所へ帰るもの──というまさしく人生の教えが込められている。
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