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「生贄の島/沖縄女生徒の記録」 曾野綾子
投稿日 : 2010/04/05 17:39
投稿者 久保田r
参照先
昭和60年4月10日 (株)角川書店 角川文庫

 第二次世界大戦中、日本の領土で唯一地上戦があった沖縄の学徒動員された女生徒たちの記録を綴った本。作者を含むスタッフが、生き残られた方々を取材し集まった記録が日付を追って順に綴られてある。

 この本を読むと、「死」の生々しさが読む端から体内に飛び込んで来て体中が悪寒に包まれる。敗色濃い日本のために戦い傷ついた兵の看護のために動員された女生徒たちの過酷で凄惨な記録。女生徒たちは、お国のためにと命をかけて看護に務め、日中には絶え間ない砲弾の雨が降り注ぎ、砲撃の止む夜間にも絶えず神経を張り巡らせて生き延びるために壕から壕へと渡り歩き、もはや人としての正常な判断が失われる極限の状態の人間たちの行動が終始ぎっしりと綴られてあり、言葉に言い尽くせぬ戦争の悲惨さ、酷さ、苛烈さに心が押し潰されそうになるほどの女生徒たちの体験が詰まっている。

 教科書でいくら日本の敗戦のことを学んでも、この本に書いてある五感に訴えかけるほどの悲惨さは伝わって来ない。この本を読むと、戦後生まれの自分の想像をはるかに超える酷い戦争の事実が嵐のように襲いかかって来る。この本を読んだところで、自分に何一つできることがあるわけではない。だが、本を読んだ記憶を残すことはできる。私はこの本を読んで得た記憶を子供たちにほんの少しでも伝えられることができればとそう願っている。

 この本は、決して歴史から消え去ることのない日本の戦争のほんの一部が深く深く衝撃的に綴られている。

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