トップページ > 記事閲覧 
「ループ」 鈴木光司
投稿日 : 2002/02/06 23:07
投稿者 Excalibur
参照先
『リング』『らせん』に続くシリーズ3部作の完結編。
と書くのは簡単だが、一読するとあまりのギャップの大きさに驚く。
舞台も登場人物も一新され、物語も前作・前々作をストレートに受け継いだ続編ではない。一体ここはどこなのか、コイツは一体誰なんだと思いながら読み進めて行くうちに謎が徐々に解かれ、物語の全体構造が明らかになったときに読者はあっと驚くという趣向である。
ただそれがあまりにも意外すぎて、納得するよりもついて行けない人の方が多そうなのが難でもある。殊に、純然たるホラー小説として前2作を楽しんだ人ほど、知らない土地でいきなり置いてきぼりを食らったような気分を味わうのではないか。そう、この作品はもはやホラーではないのだ。
私が『ループ』を読んだ時に頭に浮かんだのは、世界的ベストセラーになったジェームズ・レッドフィールドの『聖なる予言』という小説。これは「人はどこから来てどこへ行くのか」といった哲学的命題に対する内的冒険を、実際の冒険物語として描いた作品で、偶然にも私と同じ連想をした人が周囲にもいたのだが、主人公が自らの存在意義を探して旅をするという部分になんとなく共通するものを感じた。この『ループ』も同様の<スピリチュアル・アドベンチャー>と呼んでも差し支えないだろう。
だからといって、これが説教臭いお話だというつもりは毛頭ない。ただ前2作の延長線上の世界を楽しみたい人にはお奨めしかねるとだけは言っておこう。

『リング』『らせん』が映画化されたように、当然この作品も映画化の声があがった、
だが未だに実現していない。ひとつはそのスケール感ゆえだろう。説得力を持ってこの作品世界をスクリーンに描き出す為には、資金面でも人材面でも生半可な取り組み方では不可能だ。そのリスクを負う覚悟を、はたして日本映画界が持てるだろうか。
そしてもうひとつは、キーとなる或るキャラクターの設定。詳しくはネタばらしになるので書かないが、このキャラをビジュアル化することによって、せっかくのどんでん返しの効果が薄れる可能性が強いのだ。この問題点を巧くクリアしない限り観客を納得させる作品は作れまい。かといって改変した挙句に『リング2』のような原作と無関係の作品を作られるのも御免である。
記事編集 編集
件名 スレッドをトップへソート
名前
メールアドレス
URL
画像添付


暗証キー
画像認証 (右画像の数字を入力) 投稿キー
コメント





- WEB PATIO -