朗読配信サイトの「キクボン！」では、「銀河英雄伝説」の正伝・外伝合わせて全15巻を下山吉光の朗読によってオーディオブック化を完了しているが、それに続けて原作の中でも唯一アニメ化されなかった外伝「ユリアンのイゼルローン日記」を、なんと可能な限り集めたオリジナルキャストで朗読化し、更に豪華なブックレットもついた、全15枚組のＣＤ完全版ＢＯＸとしてリリースしている。
アニメシリーズを補完する役目も担った商品だと言えるでしょう。

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最後は＜特典ＤＩＳＣ＞で、Disc13は「対談１」（田中芳樹、古川登志夫、塩屋浩三、佐々木望、安達裕章、横溝克文）と「対談２」（榊原良子、佐々木望、安達裕章、横溝克文）、Disc14は「対談３」（郷田ほずみ、安達裕章、横溝克文）と「郷田ほずみ朗読」、それに「対談４」（下山吉光、横溝克文）、最後のDisc15は「下山吉光朗読」を収録しております。

「郷田ほずみ朗読」で取り上げられているのは、「第５巻九章『急転』より抜粋」、「第８巻五章『魔術師、還らず』より抜粋１」、「第８巻五章『魔術師、還らず』より抜粋２」、「下山吉光朗読」で取り上げられているのは「第５巻第五章『暁闇』」。
郷田ほずみ、そして下山吉光演じるヤン・ウェンリーの競演ということになりました。

対談では図らずも富山敬の思い出話に終始。
同盟側のキャストが揃ったのだから、これは致し方ないところで、劇中でのヤンの死と、現実での富山敬の死がリンクして感じられるのも当然と言えば当然。
出演者のみならず、リアルタイムで作品に接していたファンの共通認識でもあります。
確かヤンが死ぬエピソードが発表されてから、半年余りで富山敬自身の訃報が届いたのですから。

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タイトルに偽りありで、既に「ユリアンのイゼルローン日記」は完結しています。

Disc10には「黄金の翼　前編」、Disc11には「黄金の翼　後編」と「ダゴン星域会戦記　オリジナルキャスト版　前編」、Disc12には「ダゴン星域会戦記　オリジナルキャスト版　後編」と特典として「一言　伝説が終わり歴史が始まる」を収録しています。

「黄金の翼」は外伝としてOVA化されてはいますが、最初に小説ではなく道原かつみの描く漫画として発表された経緯があったため、通常のシリーズとは別のスタッフ、キャストで「漫画のアニメ化」として作られています。
そこで今回はナレーションにキルヒアイス役の広中雅志を起用し、ラインハルト役として堀川りょう、アンネローゼに潘恵子、アレクサンドル・ビュコックに富田耕生という配役で製作。
ファン待望の、といいたいところなのですが、熱心なファンは聞かずに封印しておいた方が良いのかもしれません…。

「ダゴン星域会戦記」は「ユリアンのイゼルローン日記」共々アニメ化されていなかった作品を、新規で音源化したものです。
その配役はリン・パオ／鳥海浩輔、ユースフ・トパロウル／津田健次郎、フロリンダ・ウェアハウザー／柚木涼香、国家安全保障委員＆銀河帝国皇帝／太田哲治、ジョアン・パトリシオ／中博史、ヤングブラッド＆シュミードリン／坪井智浩、バルトバッフェル候ステファン＆ビロライネン大将／宗矢樹頼、ヘルベルト大公／石野竜三、インゴルシュタット／酒巻光宏、ハーゼンクレーバー＆ムンガイ／金光宣明、アンドラーシュ／新居祐一、ネイスミス・ウオード＆通信士官／松原大典、同盟軍兵士／青山桐子、オルトリッチ／白石稔、オズヴァルト・ミュンツァー／下山吉光で、ナレーションはもちろん屋良有作。

キャストが充実しているので、音楽や効果音はないものの、さながらラジオドラマを聴いているかのようです。
馴染みの薄いキャラクターが多数登場し丁々発止のやり取りを繰り広げるので、単純な朗読だったらかなり聴きにくいものになっていた可能性はあるので良いのですが、こちらも肝心のナレーションが…。

今回のこの企画、「夢よもう一度」の高揚感よりも、無情な歳月の流れを強く感じさせるものになってしまったようです。
やはりあと十年は早く製作して欲しかった、と思わざるを得ません。

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Disc7「第七章　ドールトン事件」、Disc8「第八章　ベンチの秘密会議」、Disc９「出撃前夜」、それに特典としてオリジナルドラマ「忘れられない日」と「四十代に達成したいこと」を収録。

これで「ユリアンのイゼルローン日記」は完結。
既に下山吉光による朗読版があるにも関わらず、敢えてアニメ版オリジナルキャストによる新録を試みたのは快挙でしょう。
そしてナレーションを務めた屋良有作も、このキクボンによって全ての作品を担当したことになるんじゃないかと思います。

ただ出来得れば十年、いや二十年は前に録音して欲しかったなあというのが正直なところですね。
もちろんヤン役の富山敬ご存命の頃なら文句ありませんが、その時点ではアニメ版もまだ完結していなかったのだから、言っても詮無いことは重々承知です。
いや「遅すぎた」と嘆くより、「ギリギリで間に合った」ことを素直に喜ぶべきところなのでしょう。

アニメ版全編を見直すのはなかなかの苦行難行ですが（なにせ劇場公開アニメ３作、ＯＶＡ本伝全１１０話、外伝全５２話もありますから）、このＣＤなら気軽に繰り返し何度でも聴けます。
それはやはり「ユリアンのイゼルローン日記」が、本伝・外伝合わせてもっとも明るいストーリーだからというのもあるでしょう。
原作小説でも何度も読み返してるのはこの作品だけで、その楽しさを今一度思い起こさせてくれただけでも、このＣＤは価値ある逸品といえるのではないかと思います。

こうなったらこれ以外のエピソードも全てオリジナルキャスト起用による再録版を作って欲しいところですがそれは我慢するとして、何故リメイク版である『銀河英雄伝説 Die Neue These』（通称”ノイエ銀英伝”）と並行してこの作品を作ったのか、という点に若干の疑問が残ります。
旧ヴァージョンから新ヴァージョンへの全面的な切り替えはリスクが大きいため、旧ヴァージョンも現行商品として残したいため、ということでしょうか。

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Disc4は「第四章　帝国の提案」、Disc5は「第五章　旧住民VS新住民」、Disc6は「第六章　捕虜交換式」、それに特典として「ローゼンリッター日報」を収録しています。

出演者は引き続きユリアン・ミンツ役・佐々木望を筆頭に、アレックス・キャゼルヌ／キートン山田、ワルター・フォン・シェーンコップ／羽佐間道夫、ダスティ・アッテンボロー／井上和彦、オリビエ・ポプラン／古川登志夫、フレデリカ・グリーンヒル／榊原良子、ライナー・ブルームハルト／難波圭一、オルタンス・キャゼルヌ／松尾佳子、フョードル・パトリチェフ／塩屋浩三、ラインハルト・フォン・ローエングラム／堀川りょう、ジークフリード・キルヒアイス／広中雅志、カスパー・リンツ／小杉十郎太、アレクサンドル・ビュコック／富田耕生らオリジナルキャストが集結しています。

で、懐かしくも愉しく拝聴した訳ですが…
気になるのはオリジナルキャストの「老い」。
正直言って当時のイメージそのまま、という人は数えるほど。
聴いていて一瞬「誰？」と思ってしまうことが多いのは淋しい限りですが、外伝含めたアニメ版が完結してから既に１５年以上経っている（キクボンの収録時）のですから致し方ないところなのでしょう。

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Disc1は「第一章　偶数年のできごと」、Disc2は「第二章　はじめての給料」、Disc3には「第三章　全員集合」を収録。
あわせて特典として「堀川りょうインタビュー」や、二次創作ドラマの「くたばれ！カイザーに対するラインハルトの返事」、「再会」、「あざといフェザーン商人の要求」も収められています。

ドラマではないので基本はユリアン・ミンツ役佐々木望の朗読で進んでいきますが、元々ユリアンが書いた日記、という形式の小説なので違和感はありません。
その中で引用されている台詞部分、例えばアレックス・キャゼルヌの台詞であればキートン山田が、ワルター・フォン・シェーンコップであれば羽佐間道夫、ダスティ・アッテンボローなら井上和彦、オリビエ・ポプランは古川登志夫、フレデリカ・グリーンヒルは榊原良子が読み上げる、という構成になっているのです。

既に鬼籍に入られているヤン・ウェンリー役の富山敬、イワン・コーネフ役の鈴置洋孝、ムライ役の青野武の部分は代役を立てず、そのままユリアンが読み上げる、というのも朗読ならではでしょう。

音楽や効果音がないのは残念ですが（オープニングではマーラーの３番が欲しかったですね）、原作の中では一番明るくて楽しいパートなだけに、朗読でも実に良い雰囲気です。
実は部分的にはアニメ化されてはいるのですが、何らかの形で全ての映像版も見たかったですね。
今ならネット配信の短編アニメ、などという手もありますが。

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