大ヒットした「交響組曲宇宙戦艦ヤマト」のＬＰ。
はたして次なる「交響組曲」としてリリースされるのはどの作品なのか。意外にもそれはアニメーション作品ではなく、特撮映画のサントラだったのである。折りからのＳＦ映画ブームに便乗して東映が製作・公開したＧＷ超大作『宇宙からのメッセージ』がそれである。
ただこれは『ヤマト』の流れと言うよりは、やはりシンフォニーを基調にして大成功した『スター・ウォーズ』への対抗だろう。ジョン・ウイリアムス自らがロンドン交響楽団を指揮してレコーディングされた『スター・ウォーズ』のサントラは映画同様の爆発的なヒットとなり、同じくＪ・ウィリアムスが音楽を担当した『未知との遭遇』共々組曲化もされ、こちらも評判になっていた。『スター・ウォーズ』の日本上陸前に一山当てようと目論む作品が、同じようなアプローチを試みるのは頷けるところだ。
かくいう私はついつい『ヤマト』からの流れで、映画も見ずに発売日にＬＰを購入するという暴挙に出てしまっている。既に発売が決まっていた＜ポスト・ヤマト＞『宇宙海賊キャプテンハーロック』への繋ぎという気分もあったのだが、勿論映画は見に行くつもりであったし、実際見に行ったあとでも気に入ったのでどのみち買ったことは間違いない（映画見る前にサントラ買ってしまうという傾向はこのあとも続いた）。
というわけで映画を見る前にサントラを聴いてしまったわけだが、不思議と戸惑いは感じなかった。知っているメロディなぞあるわけもないのだが、それでもスンナリと最後まで楽しめ想像力をかき立てられた。見る前に嫌でも期待は高まり、逆にいざ映画を見たときには音楽に画面が負けているとさえ感じる場面もあったほどだ。
ちょっと目端の利いたファンは、『スター・ウォーズ』のサントラそっくりだと騒ぎ始めた。例えば＜エメラリーダのテーマ＞が、＜王女レイアのテーマ＞にそっくりだというのである。個人的にはさほど似ているとは思わなかったので気にはならなかった。
ただ後になって色々とクラシックを聴きこんで行くうちに、段々とオリジナリティというものに疑問を抱くようになっていく。＜ガバナスのテーマ＞は一般には『スター・ウォーズ』の＜帝国軍のテーマ＞に似ていると言われていたが、もっと直接的にストラヴィンスキーの作品群からの影響を受けていることに気付いた。そして決定的だったのが、この映画を代表するメロディーである＜リアベの勇士のテーマ＞が、ショスタコーヴィッチの「交響曲第５番」第４楽章にあまりにも酷似していること。その瞬間、この映画の、この映画音楽に対する評価が急落したのは言うまでもない。これはショックだった。裏切られた思いだった。当時既にショスタコーヴィッチの何たるかを知っていたなら、おそらくこの「交響組曲」を聴いた瞬間に怒り出していただろう。それとも呆れたかもしれない。意図的に似せたという話もあるのだが、似せる必要がどこにあったのだろうか。
それでも――この「交響組曲」は好きである。＜リアベの勇士＞も、実はショスタコーヴィッチの「第５番」より気に入っている。シンフォニーありロックありの構成も聴いていて飽きない。裏切られたという思いは決して消えないだろうが、あの日あの時間違いなく感動した、その気持ちもまた決して消えないのだ。
なお、ＣＤは＜石ノ森章太郎萬画音楽大全＞と題されたシリーズの一枚で、当時の「交響組曲」を全曲復刻し更に未収録の映画用テイクも追加されたヴァージョンである。

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１．序曲
　　　エメラリーダのテーマ〜ジルーシア人の祈り
２．惑星ミラゼリア
３．ミラゼリア人の踊り
４．スピンロック
５．宇宙航海
　　　宇宙蛍〜プレアースター号〜ガバナスの襲撃
６．美しき地球
７．宇宙戦争
８．スペース・ランナウェイ
９．シアターレストランバンド
10．リアベの勇士
11．終曲
　　　　エメラリーダのテーマ

＜ボーナストラック＞
12．ジルーシア人の祈り（映画ヴァージョン）
13．宇宙葬〜ゼネラル・ガルダ
14．漂流船・プレアースター号
15．エメラリーダの危機
16．リアベの実、ふたたび
17．美しき地球（映画ヴァージョン）
18．ガバナス大要塞
19．赤い小惑星（ほし）のハンス
20．破滅の日
21．密通者の正体〜ウロッコの死
22．リアベの勇士（シングルヴァージョン）
23．エメラリーダのテーマ（ロングヴァージョン）

作曲・編曲／森岡賢一郎
指揮／熊谷　弘
合唱／コロムビア混成合唱団
演奏／コロムビア・シンフォニー・オーケストラ

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