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「きのう何食べた?」
投稿日 : 2019/08/28(Wed) 14:58
投稿者 久保田r
参照先
2019年4月5日 毎週金曜 深夜0時12分スタート テレビ東京系列

原作:よしながふみ
脚本:安達奈緒子
企画監修:神田祐介
監督:中江和仁、野尻克己、片桐健滋
チーフプロデューサー:阿部真士
制作:テレビ東京、松竹
製作著作:「きのう何食べた?」製作委員会
オープニングテーマ:「帰り道」OAU
エンディングテーマ:「iをyou」フレンズ

<出演>
西島秀俊、内野聖陽、マキタスポーツ、磯村勇斗、チャンカワイ、真凛、中村ゆりか、田中美佐子、矢柴俊博、高泉淳子、志賀廣太郎、田山涼成、山本耕史、梶芽衣子
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きのう何食べた?正月スペシャル2020
投稿日 : 2020/01/20(Mon) 15:52
投稿者 久保田r
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放送日時:2020年1月1日 22:00〜23:30
放送局:テレビ東京系列

 連続ドラマ終了から半年後に帰って来た「きのう何食べた?」の2020年お正月スペシャルドラマ。スタッフ、キャスト陣はそのままに3章仕立てという構成。

 第1章は、3月のできごと。高級焼肉店の一室では、シロさんとケンジと小日向さんとジルベールの4人が焼肉を頬張っていた。あまりの美味しさに味とともに”脳内幸せ物質”を噛み締めているシロさんとケンジの前に、長年シロさんが憧れている女優の三谷まみが現れる。さりげなくシロさんの隣に座ったまみを前にしてシロさんは弁護士モードで対応しようとするも、ケンジに自分が彼氏であることを暴露されてしまう。実はシロさんは、小日向さんの勤める芸能事務所に所属する三谷まみのマネージャーの離婚問題の弁護をしており、その礼としてまみが現れたのだが、この席でまみの語る親への気持ちを聞いたシロさんは、自分と両親の関係について考えるようになる。

 第2章は、4月のできごと。日焼けした顔で夜分に大量のアサリを抱えてシロさん宅を訪れた小日向さんは、疲労困憊の顔でこの日起こったジルベールとの出来事を語った。ジルベールとの約束をキャンセルして急な仕事に向かった小日向さんは、潮干狩りで買い取ったアサリを持ち帰ったが、超絶不機嫌なジルベールに家に入れてもらえず仕方なくシロさんとケンジの部屋にやって来たのだった。アサリの砂抜きをしている最中、小日向さんは風呂を借り、その後ジルベールの暮らしぶりについて語り始める。後日、スーパーで偶然遭遇したケンジとジルベールは、お茶をしながら年齢差から生じる恋愛の価値観について語り合うが、小日向さんの目指す愛の形はシロさんとケンジの想定を超えるものであった。

 第3章は、5月のできごと。仕事が多忙を極めたシロさんは、ケンジに1ケ月分の食費を渡してやりくりするよう伝えていた。始めのうちは喜んで二人分の食事をせっせと作っていたケンジであったが、シロさんはほぼ寝に帰るためだけになり、生活時間のズレから顔も合わせない日が続き、ケンジはしだいに寂しさに押し潰されそうになる。ギブアップしそうなケンジに対し、ケンジの勤める美容室の店長の三宅は「倹約もいいけど、たまには自分の好きなことをパーっとしなよ」とアドバイスをし、帰宅後ケンジは実行。シロさんなら絶対にやらないという卵3個を使って巨大なオムライスを作り、まさに食べようとしたその時、シロさんが帰宅する。大きなオムライスを分けっこして食べたシロさんは「五臓六腑に染み渡る〜〜」と感激しながら自宅での”ふたりごはん”を堪能する。

 それぞれ原作にあるエピソードを下地とし、ドラマ独自のエピソードを盛り込むことによってより一層ストーリーの膨らみと登場人物を魅力的なものとしている内容。第1章の美味い牛肉を食べると”脳内幸せ物質”が出るという件は原作では別エピソードなのだが、女優の三谷まみの登場と絡ませたことで長年憧れ続けていたシロさんにはより一層の幸せ感が増す展開となっていたし、第2章の小日向さんとジルベールの一風変わったラブラブエピソードはほとんどが原作にないものであったが、二人のプライベート空間をドラマの演出手法によってより一層シロ&ケンジカップルとの差を浮き彫りとにしていて面白味が増していたし、第3章の相手にとことん尽くすタイプのケンジの献身振りは微笑ましさを通り越して一家庭の主夫の悩ましさが描写されており、より一層シロさんとの仲の良さが窺える内容となっていて良かった。

 主演の西島秀俊さんと内野聖陽さんの安定した演技力と家族を思わせる空気感の良さはもちろんのこと、山本耕史さんの絶妙な肉体美と、磯村勇斗さんのわがままいっぱいのジルベールの具現化にはたっぷりと楽しませてもらった。その中にあって第1章に登場した三谷まみ役を演じた宮沢りえさんは、芸能人のオフの顔というシチュエーションをさらりとした演技を見せつつ芸能人らしいオーラをまとっていて美しかった。それに対抗して「僕、彼氏なんです」と暴露した内野聖陽さんは、嫉妬を露わにした一般人らしさが表れていて楽しかった。

 全体をまとめているテーマは、「誰のために時間とお金を使いたいか」。対象は、親子であったり恋人であったり仕事仲間であったり。時に仕事優先で寂しくなることもあるけれど、等身大でつつましく暮らすシロさんとケンジの仲の良さはこれからも続く。正月らしくほんわかとした後味のスペシャルドラマ。
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Re: 「きのう何食べた?」
投稿日 : 2019/08/28(Wed) 15:03
投稿者 久保田r
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 漫画家よしながふみさんの原作をテレビドラマ化した作品。主人公となっているのは、中年のゲイカップル。同棲中の弁護士の筧史朗と美容師の矢吹賢二のおうちごはんをメインテーマとしつつ、昨今注目を浴びているLGBTの置かれている社会的状況についても多少触れている。

 原作は現在も連載中で、拙サイトにてコミックレビューを展開させていただいているが、まさかこの作品が映像作品化されるとは思いもよらなかった。一応カップルは登場するものの王道の男女のカップルではなく男性同士のカップルであるし、しかもドラマとして盛り上がりやすい恋愛ドラマではなく、二人が暮らす家の料理、いわゆる家庭料理の過程と食べるシーンを紹介するという地味な内容であるため、一応グルメ漫画のカテゴリーとはいえこのようなマイナーな性格の作品が映像化されることはあり得ないとずっと思っていた。ところが、近年世間を取り巻く社会の環境が変化し、テレビにはオネエタレントが普通に出演し、LGBTが社会的に周知されて来ていることにより機を見るに敏なタイミングで、ある種ホームドラマというテンションでドラマ化され、それが功を奏して脚光を浴びる格好となり成功を収めた。

 演じる配役陣も登場人物の人となりを原作に忠実に沿って演じているため、デフォルメし過ぎず且つ社会からも浮き過ぎない程度のほどよい存在感で演じられており、テレビドラマでありながら、もしかしたら彼らのような立場の人たちは日常的に身の周りにいるのではないかと思える芝居となっていたのも良かった。

 シナリオの配分も巧妙で、1クールにまとめるためのエピソードの選び方と組み立て方が実によかった。原作ファンが見たいと思っているもの(例えばジルベール・ワタル)を効果的に登場させ、彼らなりの悲喜交々を登場人物の性格を通して描くことによって深刻になりがちな彼らの立場をドラマの流れの中で自然と描写していたのがよかった。彼らのような立場であっても社会生活は人並みに送らなくてはならない。そのための心の持ちようが伝わってくる良い配分の構成だったと思う。

 それが身を結んでいたのが最終回。史朗の家へ二人で行くエピソードは、この作品を描く上で外せない重要なポイントであるし、それをどう丁寧に描くかによって作品の後味が天と地ほどの差になる。原作に忠実に沿いながらも、それを演じる俳優の表情が実に絶妙で胸に迫るものがあり、LGBTの人々への微かな希望のみならず様々な問題に直面して苦悩している人々への微かな希望にも繋がっていると思えるほどの良い後味の最終回であった。

 ラストの賢二が史朗の髪を切るシーンは、漫画の初回のオチのシーンを再現している。ドラマではストーリーのラストとなっているため台詞の意味合いが漫画とは変わってはいるが、このラストの映像によって二人が本当に恋人同士でありパートナーであるということがしみじみとよく伝わる良いシーンだった。徐々に引いていくカメラの画が、フレームアウト後の二人の行動を予感させる余韻のある映像となっていて、見ている側が少し照れくさくなりつつも、だけど恋っていいなと思わせてくれる心が温かくなる映像だった。

 演じる俳優にもシナリオにも下手な逃げのない良いドラマだった。稀有な良作。
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