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「人造人間キカイダー/THE ANIMATION」
投稿日 : 2001/08/07 22:36
投稿者 Excalibur
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『人造人間キカイダー』を原作タッチでアニメ化するというニュースを知った時は「おおっ、遂に!」と思ったものである。TVシリーズからの『キカイダー』ファンであると同時に原作コミックのファンでもあった私は、実写版とは別にコミック版をベースにしたアニメーションも作って欲しいとかねてから願っていたからだ。もし誰も手掛けないのならばあわよくば自分の手で、とまで。
だがその直後に何とも言えない失望感を味わう。待ち望んでいた作品だったが放映はCSのみで視聴が叶わなかったからだ。しかもビデオ化されてからも、何故か私のテリトリー内のレンタル店では置いている店が皆無という絶望的状況が続いた。かといって一度も見たことのない作品のビデオなりDVDなりのソフトをいきなり購入するほどの勇気も余裕もなかった。というわけでかなり回り道をしてしまったが、最近意を決してかなり遠方まで足を伸ばしてようやっと見る機会を得た。

リアルタイムで体験している世代故に、好むと好まざるとにかかわらず実写版と比較をしてしまうのは、これは避けられないことだろう。
例えば音楽――渡辺宙明の起用は無理だったのだろうか。別に実写版の主題歌をそのまま使えとか当時のBGMを再使用して欲しいとは思わない(むしろ内容にそぐわないだろう)。だがかつての実写版を担当した渡辺宙明が、今度はアニメ版を手掛けるとなればこれは興味深い。作品の描こうとする方向性が違う以上単なるリメイクにはならず(出来ず)、かといって大枠が変らない以上全く新しくも出来ない。そんな制約(?)の中で渡辺宙明がどんな手腕を発揮してくれるのか。例えば全く違う世界観で構成された中にあってジローが弾くギターの音色、プロフェッサー・ギルの奏でる笛の音、サブロウの吹く口笛のメロディといったものにかつての匂いが感じ取れればゾクゾクするような快感が味わえたのではないかと想像するのは実に楽しい。
勿論見岳章の書いたメロディーが作品に相応しくないと言っているのでは決してない。予告篇でも流れているジローの爪弾くギター曲など作品のテーマを内包したリリカルで良いメロディーなのだが、それでも何か食い足らなさを感じてしまう――殊にアクション・シーンなど――のはリアルタイム世代の性なのだろうが。

原作コミックに準じた作りと謳っていながらも実はストーリーがかなり異なっており、キャラクターの設定や配置の大枠だけを借りたオリジナル・ストーリーと表現してもいいくらいなのだが、それでも不思議と原作の持つ雰囲気、色合いといったものが漂うものになっている。これは脚本なり演出なりで巧みに石ノ森テイストを採り入れ消化しているからだが、最大のインパクトはそのキャラクターデザインにあったのではなかろうか。石ノ森作品はその知名度や実写ドラマ化された本数に比べるとアニメ化された作品は然程多いとは言えないのだが、それでもここまで石ノ森タッチを再現したアニメーションはこれまでなかったのではないか。TVシリーズとは言えこのクオリティ。待ちつづけた甲斐はあったと言うべきだろう。

分量にしてコミック3〜4冊分の内容に対して放映期間は僅か1クール。実際に作品を見るまではこれが最大の不安要因だったのだが、一度原作を構成する要素をバラしこれをオリジナル・ストーリーとして再構築することによって辛うじて持ち味を損なうことなく掬い取ることが出来たというのが私の評価である。
しかしながら原作にはまだコミック2冊分程度のドラマが残されている。原作通りのラストシーンを描くという前提のもと、現在続編シリーズがオリジナル・ビデオとして準備中である。こちらも楽しみに待ちたいものだ。
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総集編 「青い月 赤い夢」
投稿日 : 2004/04/11 22:00
投稿者 Excalibur
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7話と8話の間に放送された総集編で、単独では商品化されず<Special DVD−BOX>のみに収録されている。
1話から時系列順に単純に切り張りしたものではなく、これまでのエピソードを一旦全てばらし、ジローとミツコに絞って再構成している。そのためにシリーズを未見だと(或いは原作コミックに対する知識がないと)設定やストーリー展開が解りづらいが、『人造人間キカイダー』とはどういう物語なのか、その作品世界の雰囲気を端的に表現した出来となっている。これを見ると、改めて『キカイダー』とは<ラブ・ストーリー>なのだな、と強く感じる。
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#12 「夢の末路」
投稿日 : 2002/11/01 21:07
投稿者 Excalibur
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ハカイダーの意識を掌握した光明寺博士は、キカイダーと共にダーク基地へと乗り込む。だがそこに待ち構えていたのは、量産型ハカイダーと再生されたダークロボットたち。その攻撃の前にハカイダーが倒れた時、秘められたキカイダーの能力が覚醒する。追いつめられたプロフェッサー・ギルは最終兵器まで持ち出すが、再起動したハカイダーによってその野望も潰えた。
無事光明寺博士も救出され、ジローの帰りを待ちつづけるミツコ。だがジローは光明寺邸に背を向け、一人去ってゆくのであった・・・。
原作のジロー編のラストはそのまま01編のプロローグとなっているために些か余韻に欠けるのだが、こちらではミツコに焦点を当て、決して結ばれることのない二人の悲劇を強調した、切ないラスト・シーンに仕上った。原作との差異はかなりあるものの、ひとつのドラマの完結には相応しい出来映えといって良いだろう。
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#11 「夢みる機械」
投稿日 : 2002/10/04 21:18
投稿者 Excalibur
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原作とは違って、このTVアニメ版では良心回路の設計図は無事である。だがジロー自身が今の感情を大切にしたい、と回路の完全化を拒否する。最後まで良心回路に左右された原作版のジローに比べ、こちらの方がよりテーマが明確になっているように思う。
そしてミツコによるジローの修理シーン。先ずシルエットで描写され、続いてゆっくりとジローの服を脱がせてゆくミツコ。単に機械を修理するというだけではない、なんともなまめかしいシーンで、殊に肩から上が露出した衣裳を身に纏ったミツコの、そのアップショットだけで見せる様は2人にとっての究極の愛の表現と言っても良いだろう。
そしてミツコたちに迷惑をかけまいと、一人ダーク基地へ向かうジロー。それに気付いて必死で追いかけるミツコ。そんなジローの前に、再び姿を見せるサブロー=ハカイダー。遂に宿命の対決の時・・・。だがその戦いの最中、ジローとミツコの眼前でハカイダーは突如機能を停止する。そこに聞えてきた声、それは――「私は光明寺伝、お前の父だ・・・」
今回光明寺博士役に何故飯塚昭三がキャスティングされたのかといえば、おそらくこのシーンがやりたかったからに違いない。飯塚昭三の声で喋るハカイダー、これは実写版ファンへのサービス、そして作り手自身の楽しみ以外の何物でもないだろう。
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#10 「破壊魔」
投稿日 : 2002/06/02 00:23
投稿者 Excalibur
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良心回路の設計図が発見された。だが肝心のジローの行方は杳として知れない。外部からの影響によって進化する良心回路は、負の感情を与えられれば歪に成長することもありうるのだ。
その頃ジローは、サブロウの吹く口笛によって操られ街中で暴走、警察に追われる身となっていた。救いを求めて光明寺の研究所跡へ辿りついたジローは、そこで自分を探しに来ていたミツコたちと再会するが、そこへサブロウが現れ、ジローを操ってミツコを殺させようとする。しかしジローを信じるミツコの心が、遂にジローの呪縛を解くのだった。ハカイダーへチェンジし、ジローに戦いを挑むサブロウ。ハカイダーへの激しい怒りに囚われるジローだったが、それを必死に留めるミツコ。そんな二人にハカイダーは捨てゼリフを残す。この頭部には光明寺博士の脳が移植されているのだ、と。
原作にも実写TVシリーズにもジローが官憲に追われるシチュエーションはあるが、このアニメ・シリーズでは時間の都合もあってかサラっと流し、代りにジローとミツコの絆を強調する演出。さりげなくジャイアント・デビル(マーマゲドン・ゴッド)の設計図を出したりと、続編への伏線も怠りない?
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#9 「凍る絆」
投稿日 : 2002/05/06 20:31
投稿者 Excalibur
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雪の港町を舞台に、原作にはないミツコと母親を描いた、見る者をある種突き放したかのようなエピソード。これは既に子供向け作品ではない。
母・千草と再会するミツコ。ギルを愛していたこと、命令で子どもを産んだこと・・・・・・予期していたとはいえ、実の母の口から聞かされショックを受けるミツコ。更に千草がギルから与えられた次なる指令は、ジローの面前でミツコを殺すこと。ジローの良心回路はどんな反応を示すのか?!
千草の凶弾からミツコを庇った時、ジローは涙を流していた。機械が涙を流す?良心回路が成長する?恐怖に囚われたギルは、サソリホワイトにジローの抹殺を命じるが、そこに割って入ったのはサブロウだった。そしてミツコにギルの手掛りを残し、千草は自ら命を絶つのだった・・・。
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#8 「ともだち」
投稿日 : 2002/04/09 22:43
投稿者 Excalibur
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総集編(未見!)を挟んでいるので実際は第9話になる。
今回はマサルがメインで、原作版でのミツコの役回りをマサルに変更。マサルと触合うシルバーベアーは、普段は双子の少年と彼らが連れている熊の姿に擬しているのだが、原作では舞台が北海道だったせいか「ア」「イ」「ヌ」と付けられていた名前が、「クウヤ」「カイト」「リク」に改められている。
ただマサル中心のエピソードとはいえ、ミツコとジローの急接近ぶりがどうしても目に留まる。原作以上にミツコの比重が大きく、これはラブストーリーの面を強調した結果か。
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#7 「悲の残照」
投稿日 : 2002/03/21 20:50
投稿者 Excalibur
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監禁されている旧・光明寺邸で父の日記を見つけたミツコは、驚愕の事実を知る。プロフェッサー・ギルの陰謀、兄・一郎の死の真相、そして母がギルのスパイだったこと。
ミツコ救出に向かったジローは、キカイダーへのチェンジを拒む。二度とミツコの前では、あんな醜い姿にはなれないと。嘲笑うゴールデンバット。だが、「人間全てが幸せなわけじゃない」というミツコの言葉に心揺らいでいた。
機転を利かせ、チェンジしないまま罠をくぐりぬけるジローに対して、ゴールデンバットは正々堂々と戦いを挑む。その戦いの余波がミツコに及び絶体絶命の時! なんと身を呈してミツコを庇ったのはゴールデンバットだった。彼の中の良心回路の目覚めか。助けようとするミツコを制して彼は「楽になりたい」と告げる。その時どこからともなく飛んできた短剣が、ゴールデンバットに止めを刺す。追い掛けようとするジロー。だがミツコはジローの手を掴んで叫ぶ。「私を一人にしないで!」と。

謎解きと、ジローのアクションをカットバックで見せる演出が秀逸。真相を知ったミツコが等身大の少女に戻るあたりも自然。若本規夫の怪演と関智一の抑えた演技のコントラストもいい。
そして最後に登場するサブロウの、さりげなく残酷性もインパクト大であった。前半の山となる秀作エピソードである。
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#6 「負の断片
投稿日 : 2002/02/07 21:48
投稿者 Excalibur
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訪ねてきた服部の口から、父・光明寺博士がダークと呼ばれる闇の組織のボス・プロフェッサーギルと関りがあったことを聞かされたミツコは、更に自分の母までもがギルと繋がりがあったことを知るのだった。だがその時、ギルの命を受けたゴールデンバットによって、ミツコはジローを誘き出す囮としてさらわれてしまう。
廃墟となった屋敷に軟禁されたミツコは、やがてそこが幼い頃に自分が住んでいた家だったことに気付く。徐々に蘇ってくる遠い日の記憶。
そんなミツコの前に姿を現したゴールデンバットは、ジローの悲劇について説くのだった。良心回路を持つことによって命令の拒否権を得たジローは、ロボットでも人間でもない中途半端な存在なのだ、と。そして「良心回路」の発想そのものが人間の自惚れに過ぎないとも断言する。その言葉を否定しようとするミツコだったが、ゴールデンバッドは更に追撃ちをかける。ジローはお前を愛しているが、お前はその愛を受け入れられるのか。人間に機械は愛せない、もしそれが出来ると考えているのならそれもまた「自惚れ」なのだ、と。
ゴールデンバッドを演じた若本規夫の怪演が光る一本。
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#5 「雨の街」
投稿日 : 2002/01/29 22:52
投稿者 Excalibur
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原作にはない完全なオリジナル・エピソードで、かなりアダルトなテイスト。
爆破事件の重要参考人として追われているジローは、雨の中で1人の女性と出会う。ミユキというその女性の家で一夜を明かしたジローは、以前にも似たようなことがあったと、ある青年の話を聞かされるのだった。その青年トオルは金でダークに雇われ街に爆弾を仕掛ける陰謀に荷担していた。街が廃墟になる前にミユキを迎えに来たトオルと出会うジロー。だがそこにイエロージャガーが出現し、トオルを裏切り者として処刑しようとする。ミユキの元へと帰るように説得するジロー。その熱意にほだされてトオルは爆弾の除去を決意する。イエロージャガーを倒し、爆弾を全て撤去したトオルの元へ駆け付けるジロー。だが既にトオルはダークの魔の手に倒れていた・・・。
仕事から帰ったミユキは誰もいない自分の部屋で、いなくなったジローにつぶやく。「どこかであの人に会うことがあったら伝えてよね、私はいつまでもここで待っているから・・・」。
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#4 「鏡」
投稿日 : 2002/01/26 23:21
投稿者 Excalibur
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捨て猫を拾った少女と出会ったジロー。私がこの猫を守ってあげると言う少女はジローに問う。「お兄ちゃんには守ってあげたい人はいるの?」と。その言葉がジローの胸を打つ。
一方のミツコはジローが赤い血を流し殺されてしまう夢を見、涙を流すのだった。そんな中ようやっと再会した二人だったが、超音波笛に操られたジローはミツコを襲ってしまう。そしてオレンジアントとの戦いの中で己の醜さに気づかされたジロー。チェンジした姿を少女には「化け物」と恐れられたジローは、戦いの後恥じるようにミツコの前から姿を消してしまう。ジローはやはり酷い事を言った自分を避けていると思っているミツコに、服部はジローがミツコを避けているのは別の理由からだと推察する。そしてミツコは「ジローを一番人間だと感じているのは貴女だ」と指摘され愕然となる・・・。
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#3 「ストレイ・シープ」
投稿日 : 2001/10/29 23:37
投稿者 Excalibur
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「ただの機械!」ミツコにそう罵られたジローは、あてもなく街をさ迷う。公園のカラクリ時計に自分の姿を重ね合わせるジローの描写が秀逸。カラクリ時計には「家」があるけれども、自分には帰るべき場所がない。時計を見つめる母子の会話と相俟って、原作以上にジローの孤独感を掘り下げることに成功している。また、これ以上「兄弟」とは戦いたくないとの願いも虚しく、「兄弟」であるカーマインスパイダーとは理解し合えず、「お前は壊れている」との言葉に怒り一撃で葬り去るジローの姿が、一層その孤独さを際立たせているようだ。
今回から名バイプレイヤーの服部半平が登場。原作やTV特撮版のようなギャグメーカーの要素は少なく、原作以上の比重を持った重要キャラとなって以降の作品を支えていくようになってゆく。
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#2 「狂った機械」
投稿日 : 2001/09/20 23:11
投稿者 Excalibur
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素直にジローを受け入れるマサルと、嫌悪感を覚えてしまうミツコ。機械でありながらあまりにも人間に近い存在であるジローへの違和感もさることながら、研究にかまけて家庭を蔑ろにしてきた父親への反発もあるのだろうと思われる。
ギルの吹く笛の音によって狂わされたジローが自分を襲ったことによって、ミツコは決定的にジローを拒絶するのだった。意図的に引用された『ピノキオ』が、物語展開を更に引き締めることに成功している。
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#1 「孤独な人形」
投稿日 : 2001/09/17 23:03
投稿者 Excalibur
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山奥の古びた洋館、雷鳴轟く夜更け・・・・・・『フランケンシュタイン』物などの古典的ホラー映画風のイントロで、この物語は幕を開ける。
実験に失敗した光明寺博士の焦燥感、闇に光るダーク・ロボットたちの目、父の身を案じるミツコ、と原作では割とあっさりと流されている部分をも丹念に掘り下げ、見事な導入部となっている。
覚醒したジローの描写も実は原作とはまるで違っているのだが、それでも充分な説得力を持っているのはスタッフが原作をよく読みこんでいるからなのだろう、と思う。
ラスト、初めての戦闘を終えたキカイダー。炎の中で振り向くその姿に合い入れない異形の者の恐怖感を漂わせているあたりも見事。
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